記事: サーフボードの傷はどの程度でリペアすべきか|爪と水で見分ける判断の基準

サーフボードの傷はどの程度でリペアすべきか|爪と水で見分ける判断の基準
板に傷を見つけたとき、知りたいのは「これは今すぐ直すのか、次の週末まで待っていいのか」だと思います。
判断の軸は、水が入るかどうかです。 見た目の派手さとは必ずしも一致しません。長さ5cmの目立つ擦り傷でも、表面のクリア層で止まっていれば急ぎません。逆に、爪の先ほどの小さな穴でも、そこからフォームが見えていれば早めに塞いだほうがいいのです。
確かめる順番は3つです。
- 爪を立てて滑らせたとき、引っかかるか
- フォーム(白い発泡材)が見えているか
- 傷の周りを押すと、水が滲み出るか
1で引っかからなければ、多くの場合は表面で止まっています。引っかかったら2と3に進んでください。2か3のどちらかが「はい」なら、リペアの対象です。
以下、傷がつくタイミングから、程度の見分け方、自分で直せる範囲までを順に整理します。
サーフボードの傷はいつつくのか
意外に思われるかもしれませんが、サーフィンをしている最中よりも、運んでいるときと置いているときのほうが傷はつきます。
海の中でつく傷は、他のサーファーのボードとの接触、自分のフィンがデッキに当たる、浅い場所での底当たりなど、原因がはっきり分かるものが多く、ぶつけた瞬間の記憶がありますから、上がってすぐ確認できます。
一方で、いつついたのか分からない傷は、陸にいる間についたものかもしれません。
- 車への積み下ろし — ドアの縁、ルーフキャリアの金具、他の荷物との接触
- 立てかけていた板が倒れる — ノーズとテールの角が欠けやすい
- 板同士の接触 — 2枚以上を重ねたときに、フィンが下の板のデッキに当たる
- 玄関や廊下での取り回し — 壁の角、ドアノブ
つまり、リペアの技術を覚えるより先に、置き方と運び方を見直すほうが傷は減ります。この記事の後半にその話を書きました。
傷の程度を確かめる — 爪と水の2段階
爪で引っかかるかを見る
まず乾いた状態で、傷の上に爪を立てて軽く滑らせます。引っかかりを感じなければ、クリア層の中で止まっている可能性が高いですし、引っかかったら、グラス層まで届いているかもしれません。
この方法が広く使われているのは、道具が要らず、その場でできるからです。ただし爪の判定だけでは「水が入るかどうか」までは分かりませんので、次の段階に進みます。
押して水が滲むかを見る
乾いた状態で、傷の周辺を指で押します。 傷の隙間から水が滲んでくれば、内部に浸水しています。
海から上がった直後は表面が濡れていて判別できません。一度しっかり乾かしてから確認してください。 乾かした後に押して何も出てこなければ、その傷はまだ内側まで通っていません。
判別しにくいときは、傷の周りを拭いて乾かし、日陰に立てて数時間おいてから同じ場所を押す、という手順があります。時間を置くほど、内部の水は重力で下に集まります。テール側を下にして立てておけば、テール寄りの傷は判定しやすくなります。
傷の4段階と対応
段階1 表層のスクラッチ
クリア層に線が入った状態で、白く曇って見えることもあります。爪では引っかかりませんし、水も入りません。
対応: 急ぎません。 気になるなら、他の傷をまとめて直すときに一緒に処理すれば十分です。
段階2 プレッシャーディング(フットマーク)
荷重で押されたへこみで、割れは入っていません。爪では引っかからず、水も入りません。サーフィンでは「フットマーク」とも呼ばれます。デッキに残る足の跡のことで、荷重がかかり続けた場所にできます。
対応: 急ぎません。 強度への影響は小さいので、へこみそのものを気にしすぎる必要はありません。見るべきは、へこみの中央に割れが入っていないかどうかです。

段階3 ヘアラインクラック
髪の毛ほどの細い割れで、グラス層まで達しています。爪では引っかかります。水は入ることがあります。
対応: 要確認。 ここが最も判断に迷うところです。爪では引っかかるのに、水が出てくるとは限らないのです。前のセクションで書いた「乾かしてから押す」を、ここで使ってください。押して水が出るならリペアします。

段階4 オープンディン
フォームが露出している状態で、穴・欠け・剥がれのいずれかです。爪は明らかに引っかかりますし、水も入ります。
対応: 乗る前に塞ぎます。 放置すると、1回のセッションでも水が入ってしまいます。

浸水を放置するとどうなるか
水はフォームに吸われ、次の3つが起きます。
重くなる
数十グラム単位で増えます。数十グラムそのものを手で感じ取るのは難しいですが、放っておけば乗り味も変わってきます。
変色する
フォームが茶色く変わり、外からも見えるようになります。デッキ側から透けて見えるようになったら、かなり進んでいます。

剥離が広がる
フォームとグラス層の間に水が入ると、その周囲から剥離(デラミネーション)が進みます。押すとぶかぶかする部分が出てきたら、これです。
厄介なのは、この3つが乾かせば元に戻るものではないことです。吸われたフォームは戻りません。だから、水が入る傷は早く対処するほど被害が小さいという話になります。1週間放置するのと1ヶ月放置するのとでは、必要なリペアの範囲が変わります。
小さいから大丈夫だろう、と思って乗り続けるのがいちばん惜しい。穴の大きさと入る水の量は、必ずしも比例しないのです。
自分でリペアするか、プロに任せるか
ここが分かれ目になります。判断の目安を書いておきます。
自分でやれる範囲
デッキやボトムの、フォームが少し見えている程度の小さなディン。市販のリペア材で塞げます。条件は1つで、中が完全に乾いていることです。濡れたまま塞ぐと、水を閉じ込めてしまいます。
作業そのものは、乾かす、傷の縁の浮いた部分を軽く削る、リペア材を充填する、硬化させる、はみ出した分を平らに整える、という流れです。時間がかかるのは削りと仕上げではなく、乾かす工程です。浸水していた板なら、数日から1週間ほど見ておくくらいでちょうどいいのです。ここを急ぐと、内側に水を閉じ込めたまま蓋をすることになります。
自分でやる場合、板の素材を確認してください。PU(ポリウレタン)とエポキシでは使う材料が違います。 PU用の材料をエポキシボードに使うと、うまく付かなかったり、フォームを傷めたりします。板のどこかに表記があるはずですが、分からなければ買った店に聞くのが早いです。
プロ(ショップ)に出したほうがいい傷
- フィンボックスやリーシュカップの周り — 構造部分で、強度に直結します
- レールの割れ — 曲面で力がかかる場所。きれいに仕上げるのが難しい
- ノーズやテールの欠け — 形が変わると乗り味に影響します
- 広い範囲の剥離 — 押してぶかぶかする面積が手のひらより大きいなら、自分で扱う範囲を超えています
- 浸水が進んでいるもの — 乾かす工程そのものに時間と判断が要ります
迷ったら出す、で問題ないと思います。判断を誤ったときの損失は、リペアにかかる費用よりずっと大きいからです。フォームまで水が回った板を自己流で塞ぐと、内側で剥離が進んでから気づくことになります。
出すタイミングにも少し注意が必要です。波のいい時期はショップも混みます。手元に戻るまでの期間を先に確認してから預けると、次のセッションの予定が立てやすくなります。「今週末は乗れない」と分かっていれば、代わりの板を借りるなり、予定を組み替えるなりできます。
海でその場にできる応急処置
セッションの途中で傷に気づくこともあります。その場でやれるのは、あくまでその日を乗り切るための処置です。
防水テープを貼る、ワックスで穴を埋める、といった方法があります。どちらも必ず水気を拭いてからにしてください。濡れたまま貼ると、中に水を閉じ込めます。
そして、これらを恒久的な処置と思わないことです。帰宅後に剥がし、乾かして、あらためてリペアしてください。応急処置のまま何週間も乗り続けると、テープの下で剥離が進んでいた、ということが起こります。
運搬・保管でつく傷を減らす
冒頭に書いたとおり、傷の多くは陸でつきます。つきやすい場所は決まっています。
- レール(サイド) — 立てかけたときに当たる一点
- ノーズとテール — 積み下ろしのときにぶつける先端
- デッキ — 他の板やギアを重ねたときの擦れ
対策は3つです。壁に直接当てない(当たり面を柔らかいもので受ける)。縦置きするならテールを下にして床にマットを敷く。運搬中は板同士・ギアと直接触れさせない。
3つのうち、運搬中の擦れは工夫で最も減らしやすい部分です。板を1枚ずつ包むだけで、ほとんどなくなります。
飛行機に預けるときは、擦れよりも先に破損への備えが要ります。サーフボードを飛行機で運ぶにまとめました。
ロングボードやミッドレングスは、重量がある分だけ当たったときの力も大きくなります。ノーズとテールが長く突き出していて、取り回しの途中でぶつけやすいのも実際のところです。運ぶときに先端がどこを通るかを意識するだけでも違います。
Shignの場合
Shign の Journey Light は、ショートボード用のボードケース(ソフトカバー)です。
Journey Light(Hemp Indigo / Premium Black)。生地は一枚の中で柄が移り変わるように織られているため、同じカラー・同じサイズでも一点ごとに柄の出方が違います。
この記事で見てきたとおり、傷の多くはサーフィン中ではなく運搬と保管でつきます。掛けておけば、車への積み下ろし、駐車場から浜までの移動、家での保管という、その擦れが生まれる場面をひととおりカバーできます。
生地は70Dリップストップ・ポリエステル100%で丈夫です。リップストップ織りが引き裂きの広がりを抑え、裏面のアクリル樹脂加工によってワックスが染み込みにくい処理を施しています(ワックスの染み込みを完全に防ぐものではありません)。撥水と紫外線の劣化防止は後加工ではなく生地レベルで備わっていますので、板を日焼けから守る役割もあります。ファスナーのないスリップオン式で、重量は約450g。海から戻ってさっと掛ける動作に無理がありません。
何よりもユニークなデザインが特徴です。和柄の麻をモチーフにした生地は、シンメトリーからアシンメトリーへ移り変わる大きな一枚として織られていて、そこから切り出すため一点ごとに柄の出方が違います。人と同じものは選びたくない、という方にぴったりのサーフボードカバーです。
対応サイズはShort(〜6'4"/193cm)で、Mid・Longは計画中です。
なお、Journey Light は非パッドのカバーですので、落下や衝突から板を守るものではありません。減らせるのは擦れ・日光・埃であって、ぶつけて開く穴とは別の問題です。
→ Journey Light(サーフボードケース/ソフトカバー)
まとめ
- 判断の軸は「爪で引っかかるか」「フォームが見えているか」「押して水が滲むか」の3点
- 表層のスクラッチとプレッシャーディング(フットマーク)は急がない。ヘアラインクラックとオープンディンは対応する
- 浸水は元に戻らない。早く対処するほど被害が小さい
- 小さなディンは自分でリペアできる。構造部分・レールの割れ・広い剥離はショップへ
- 傷の多くはサーフィン中ではなく、運搬と保管でつく
保管そのものの原則は、こちらにまとめました。



