
サーフボードのワックスの落とし方|剥がす手順と道具、どこで作業するかまで
ワックスは、力で削るものではありません。少し柔らかくしてから、コームのエッジで撫でるように落とすのが早道です。
もうひとつ、あまり書かれていないことがあります。どこで作業するかを決めてから始めてください。 部屋の中だと汚れそうだし、外だと削りかすをまき散らしそう——落とし方を調べていて詰まりやすいのは、手順よりここなのです。
いつ剥がすか
毎回落とす必要はありません。剥がすタイミングは5つです。
汚れて黒ずんできた
砂や皮脂を吸ったワックスは、灰色から黒っぽくなってきます。見た目の問題だけでなく、汚れを噛んだ層はグリップが落ちてしまいます。 上から塗り足しても、下の層が滑るので効きません。

足が滑るようになった
塗り足してもグリップが戻らないなら、層が厚くなりすぎています。足の裏で押してワックスが動く感触があれば、一度リセットしたほうが早いです。
水温が変わってワックスのタイプを替えるとき
夏用と冬用では硬さが違いますから、冬用の上に夏用を塗っても、下の硬い層が効いてしまって思ったグリップになりません。 季節の切り替えは、落としてから塗り直す機会でもあります。
長期保管に入るとき、または板を手放すとき
ワックスは時間が経つと酸化して硬くなります。数ヶ月そのまま置いた板は、後から落とすのにずいぶん手間がかかってしまいます。 中古で売るなら、落としてからのほうが状態を見てもらえます。
リペアに出すとき
傷を直してもらうときは、ワックスを落としてから持っていってください。 ショップ側から先にそう言われることがほとんどです。ワックスが乗ったままだと直す場所のまわりが見えませんし、こちらで落としてから持ち込むほうが話が早く進みます。
始めたばかりの方が迷いやすいのは、「塗り足していいのか、落とすべきなのか」の線引きだと思います。目安として、塗り足して1回乗ってもグリップが戻らなければ落とす、と決めてしまえば悩まずに済みます。落とす回数は、週に1回乗る人で年に2〜3回あれば十分です。洗う・乾かすを含めた日々の手入れはサーフボードの手入れのほうにまとめています。
どこで剥がすか
削ったワックスは、細かい粒になって散ります。この粒は、掃除するときに厄介ですので、作業する場所や環境を予め決めておきましょう。
室内でやる場合
新聞紙では足りません。大きめの段ボールを開いて板の下に敷くか、レジャーシートを広げましょう。 段ボールなら、作業が終わったあとにそのまま四隅を持ち上げて包めます。
板を床に直置きすると、削りかすが板の下に回り込んでしまいます。低めの台か、椅子2脚にタオルを敷いて渡すと、下に落ちたぶんを一度に集められます。
作業が終わったら、足の裏と靴下を見てください。踏んだ削りかすは、そのまま部屋中に運ばれてしまいます。 シートの外に一歩出る前に払っておけば、あとの掃除が要りません。
削りかすはどう捨てるか
集めた削りかすは、紙に包んでから袋に入れましょう。油分を含んでいるので、そのまま袋に入れると内側に張りついてしまいます。ベースコートまで落とした日は、まとまった量が出るはずです。下に敷いた段ボールを受け皿にしておけば、四隅を持ち上げてそのまま包めますから、床に落とさずに片付きます。ゴミの区分は自治体で違いますので、判断がつかなければ可燃ゴミの扱いを確認してください。
ベランダ・屋外でやる場合
風のある日は避けましょう。削りかすは軽いので、飛んでしまいます。 隣の家のベランダまで飛ばしてしまうと、ワックスは油分ですから簡単には落ちません。
排水口に流すのもやめてください。ワックスは水に溶けませんし、冷えると固まります。 排水管の中で同じことが起きてしまいます。
海やビーチではやらない
砂に混じった削りかすは回収できません。サーファーが自分で汚す場所ではないはずです。
車の中は論外
シートに落ちたワックスは、夏の車内で溶けて繊維に染み込んでしまいます。車内は、このあとの節で書くとおり、ワックスにとって最悪の環境なのです。
作業しやすい気温がある
真冬の屋外は、ワックスが硬すぎて力が要ります。逆に真夏の日中は、削る前から溶けてコームに絡んでしまいます。春や秋の日中、あるいは夏なら朝のうちが、いちばん作業が楽です。
冬にどうしてもやるなら、暖房を効かせた部屋に板を1時間ほど置いてから始めましょう。板の温度を上げるのではなく、部屋の温度に馴染ませるという感覚です。
準備する道具
必要なものは少ないです。
| 道具 | 用途 |
|---|---|
| ワックスコーム(スクレーパー) | 削る側のエッジで落とし、櫛の側で溝を掻く |
| ウエス(着なくなったTシャツで足ります) | 仕上げに拭き取る |
| ワックスリムーバー | 最後に残った薄い膜を落とす。毎回は要りません |
| 段ボールかレジャーシート | 削りかすの受け皿 |
| ゴミ袋 | 削りかすをまとめる |
リムーバーは、コームで落としきったあとの仕上げに使うものです。 最初からかけてしまうと、溶けたワックスが伸びて広がり、かえって作業が増えてしまいます。
リムーバーには、スプレータイプと液体タイプがあります。広い面を一度に処理するならスプレー、量を細かく調整したいなら液体という使い分けです。ただしスプレーは狙っていない場所にも飛びますから、デッキパッドやリーシュカップに直接かからないよう、どちらのタイプでもウエスに取ってから使うほうが安全だと思います。
どのタイプを買っても、この作業自体は年に数回です。1本買えばしばらく持ちますから、容量の大きいものを選ぶ理由はあまりありません。
100円ショップのプラスチックのヘラやカードで代用している人もいます。当社は試していないので勧めません。 使うなら、角が立っているものは避けてください。硬い角でこすると、表面に細かい傷が入ってしまいます。
剥がす手順
順番は、柔らかくする → 削る → 仕上げる、の3段階です。
1. 少しだけ柔らかくする
冷えて硬いワックスをそのまま削ると、力が要るうえに欠けて飛び散ってしまいます。削る前に、ほんの少し柔らかくしてください。
やり方は3つあります。
- 日向に数分置く。 いちばん手軽です。ただし置きっぱなしにしない
- ぬるま湯をかける。 熱湯は使いません
- ドライヤーを離して短く当てる。 低温設定で、一箇所に留めない
共通するのは、ワックスの表面だけを温めて、板そのものを熱くしないことです。「温めれば簡単に取れる」と書かれているのをよく見ますが、当社は熱がボードに何をするのかを実測した側なので、条件を付けさせてください。
当社が2026年8月に測ったところ、日除けをして車の後部に寝かせた板でも、車内は52.2℃まで上がり、40℃以上が9.2時間続きました(車に積みっぱなしにするとどうなるか)。ワックスを落とすために表面を数分温めるのと、板が9時間高温に置かれるのは、まったく別の話です。 前者は作業ですが、後者は放置ですから、混同しないでください。
2. コームのエッジで削る
力を入れる作業ではありません。 コームを寝かせ気味に当てて、レール側からセンターに向けて撫でます。厚い層は、一度に取ろうとせず2〜3回に分けましょう。
削りかすは、板の上に集まってきます。そのまま端まで運んで、下に敷いたシートに落としてください。 途中で手で払うと、飛び散ってしまいます。
デッキパッドの縁、リーシュカップの周り、レールの丸みの部分は、コームが入りにくい場所です。櫛の側の角を使えば掻き出せます。

ベースコートまで落とすか
ワックスは、下地のベースコートと、その上に塗るトップコートの2層になっています。落とすときに、どこまで取るかを決めてください。
| 目的 | どこまで落とすか |
|---|---|
| グリップが効かなくなった | トップコートだけ。 ベースは残して塗り直す |
| 汚れて黒ずんだ | 全部。 汚れはベースまで入っています |
| 夏用から冬用に替える | 全部。 ベースの硬さも季節で違います |
| 長期保管・手放す | 全部 |
トップコートだけを落とすなら、コームを寝かせて軽く撫でる程度で止めます。ベースは板の表面に薄く食い込んでいますから、削っても白っぽく残ります。それで正解です。
全部落とすと決めたなら、コームのあとにリムーバーを使ってください。ベースは、コームだけでは取りきれません。
3. リムーバーで仕上げる
コームで落としきると、うっすら膜が残ります。リムーバーはボードに直接かけず、ウエスに取ってから拭いてください。 使う量が減りますし、垂れて他の場所に広がるのも防げます。
拭き終わったら、真水で流して、日陰で乾かします。 リムーバーの成分を残したまま次のワックスを塗ると、乗りが悪くなってしまいます。
夏、車内で溶けてしまったとき
夏の車に積みっぱなしにすると、ワックスは溶けてしまいます。この場合は、これまでと逆のことをしてください。温めずに、冷やしてから削ります。
溶けたワックスは、板の表面で薄く広がり、砂を噛んで固まっています。柔らかいまま削ろうとすると、コームに絡んで伸びるだけです。涼しい場所に数時間置いて、しっかり固めてから削るほうが早く終わります。
温度の実感がない方のために、当社の実測を置いておきます。日除けをして車の後部に寝かせただけで、車内は52.2℃、40℃以上が9.2時間続きました。ワックスの融点はこれよりずっと低いところにありますから、「日除けをしているから大丈夫」は成り立ちません。
カバーやケースに入れたままでも同じです。同じ3日間の測定では、50℃を超えていた時間はカバーの内側のほうが長く、裸の板の2倍でした。ケースは熱を防ぐものではないのです。
溶けたワックスがケースの内側に移ってしまった場合は、ケースの素材を確認してから対処しましょう。当社の Journey Light は、裏面のアクリル樹脂加工によってワックスが染み込みにくくなっていますが、それは高温でも溶けないという意味ではありません。夏の車内に積んだままにしない、という話に戻ります。
生地に移ったワックスは、冷やして固めてから、指の腹か柔らかいヘラでこそげ取るのが基本です。リムーバーを生地にかけるのは避けてください。ワックスは落ちても、生地の撥水加工まで落ちてしまうことがあります。落ちきらないぶんは、次に板を入れたときに移り戻ることはほとんどありません。 完璧に取ろうとして生地を傷めるほうが損です。
そもそもこの状態にしないための対策は、夏場に車へ積みっぱなしにしないこと、それだけです。ワックスを落としてから積むのでも構いません。
剥がしたあと、どうするか
落としたあとの選択肢は3つです。
すぐ塗り直す
次のセッションが決まっているなら、乾いてからベースコートを塗り直します。リムーバーの成分が残っていると乗らないので、真水で流したあと完全に乾かしてから塗ってください。
塗らずに保管する
しばらく乗らないなら、塗らないまま保管に入りましょう。ワックスは、保管中のボードにとって何の役にも立ちません。 酸化して硬くなるだけです。
保管に入れる前に、傷の確認をしておいてください。判断の基準はサーフボードの傷はどの程度でリペアすべきかにまとめました。置き場所の考え方はサーフボードの保管方法です。
手放す
売るか譲るなら、落としてからにしましょう。ワックスが乗ったままだと、デッキの状態が見えません。 相手も判断できませんし、こちらも安く見られてしまいます。
落としたてのボードは無防備になる
ワックスを落としたてのボードは、表面が素の状態です。このタイミングでカバーに入れれば、内側にワックスが移りません。 Shign の Journey Light は、ショートボード用のボードケース(ソフトカバー)です。ワックスを落として乾かした直後は板がいちばんきれいな状態ですので、ここで掛けておけば、次に使うまでのあいだに埃と擦れが積み上がりません。
Journey Light(Hemp Indigo / Premium Black)。生地は一枚の中で柄が移り変わるように織られているため、同じカラー・同じサイズでも一点ごとに柄の出方が違います。
生地は70Dリップストップ・ポリエステル100%で丈夫です。リップストップ織りが引き裂きの広がりを抑え、裏面のアクリル樹脂加工によってワックスが染み込みにくい処理を施しています(ワックスの染み込みを完全に防ぐものではありません)。撥水と紫外線の劣化防止は後加工ではなく生地レベルで備わっていますので、板を日焼けから守る役割もあります。ファスナーのないスリップオン式で、重量は約450g。
何よりもユニークなデザインが特徴です。和柄の麻をモチーフにした生地は、シンメトリーからアシンメトリーへ移り変わる大きな一枚として織られていて、そこから切り出すため一点ごとに柄の出方が違います。人と同じものは選びたくない、という方にぴったりのサーフボードカバーです。
対応サイズはShort(〜6'4"/193cm)で、Mid・Longは計画中です。




