
サーフボードのワックスはいつ塗るか|水温での選び方と塗り替えの目安
ワックスを塗る場面は4つしかありません。 板をおろすとき、ワックスを落としたあと、季節が変わったとき、そして毎回のセッション前です。
そして選ぶ基準は水温ひとつですから、気温や季節で決める必要はありません。ここを取り違えると、真夏に硬すぎるワックスを塗って足が滑ったり、春先に柔らかいものを塗ってべたついたりすることになります。
この記事では、塗る場面、水温での選び方、ベースコートとトップコートの違い、実際の塗り方、そして塗り替えの判断までを順に書きます。
そもそも、何のために塗るのか
先に前提を揃えておきます。ワックスは板を守るためのものではなく、足を滑らせないためのものです。
サーフボードのデッキ面は樹脂で仕上げられていて濡れるとよく滑りますので、そこに細かい粒のある層を作って、足の裏が引っかかるようにします。これがワックスの役割です。
引っかかりが要るのは、テイクオフで立ち上がる瞬間、波の上で足を踏み替えるとき、そしてパドリング中に胸と手が板に触れているときの3つです。なかでもテイクオフは体重が一点にかかった状態で足を置く動作ですから、ここでグリップが無いとそもそも立てません。ワックスが減っていることに気づくのは、たいていこの瞬間です。
ウェットスーツを着ている時期は、胸が触れる範囲も効いてきます。ウェットの生地は板の上でよく滑りますので、パドリング中に体がずれるようなら、そこまで塗る範囲を広げてください。
つまりワックスは「板の表面をざらつかせる消耗品」であって、減ったら足すものです。ここが分かっていれば、以下の話は全部その応用になります。
ワックスを塗る4つの場面
1. 新しい板をおろすとき
何も塗られていない状態から始めますので、ここがいちばん手間のかかる場面です。ベースコートから作ります。
2. ワックスを全部落としたあと
季節をまたいで保管したあとや、黒ずんできて一度リセットしたあとです。新品と同じで、下地から作り直すことになります。落とし方はサーフボードのワックスの落とし方にまとめました。
3. 水温が変わったとき
季節の変わり目です。前のシーズンのワックスが残ったまま違う硬さを重ねるとうまく乗りませんので、扱いには順番があります。これについては後で詳しく書きます。
4. 毎回のセッション前
いちばん頻度が高いのがこれです。すでに下地があるぶん、トップコートを軽く足すだけで済みます。
つまり1と2が「作る」作業、3が「切り替える」作業、4が「足す」作業ですから、同じ「塗る」でもやることの量はまったく違います。
水温でワックスを選ぶ
ワックスのパッケージには、必ず対応する水温帯が書かれています。一般的には次の4つに分かれています。
| 区分 | 対応する水温帯 | 硬さ |
|---|---|---|
| TROPICAL(トロピカル) | いちばん高い水温向け | いちばん硬い |
| WARM(ウォーム) | 夏から初秋 | 硬め |
| COOL(クール) | 春・晩秋 | やや柔らかい |
| COLD(コールド) | 真冬 | いちばん柔らかい |
注意してほしいのは、この区分に対応する具体的な水温がブランドごとに違うことです。同じ「WARM」でもメーカーによって想定している範囲がずれていますので、ここでは何度から何度という数字は書きません。買うときにパッケージの表記を見てください。そこに書かれている数字が、そのワックスの正解です。
覚えておくとよいのは、水温が高いほど硬いワックスを使うという関係です。直感と逆に感じるかもしれませんが、暖かい海では柔らかいワックスが溶けてしまいますので、硬いものを選んでちょうどよくなります。硬いワックスは水温の高さで程よく柔らかくなり、そこでグリップが出るのです。逆に冷たい海で硬いワックスを塗ると、硬いまま柔らかくならないので足が滑ります。
そして判断するのは気温ではなく水温です。春先の陸は暖かくても海はまだ冷たいことがありますから、入る水のほうを見てください。
ベースコートとトップコート
ワックスは2種類を重ねて使います。ここを知らずにトップコートだけ塗っている人は、かなり多いと思います。
ベースコート(下地)
硬いワックスで、板の表面に細かい粒の土台を作るのが役割です。水温に関係なく硬いものを使いますし、一度しっかり作ればしばらくは作り直さずに済みます。
トップコート(表層)
水温に合わせた柔らかいワックスで、ベースの粒の上に乗せて実際に足がグリップする層を作ります。減っていくのはこちらですから、毎回足すのもこちらです。
この2層構造には理由があります。ベースだけでは硬すぎてグリップしませんし、トップだけを直接板に塗ると粒が立たずに平らな膜になってすぐ剥がれてしまいます。土台があるからこそ、上の層が留まるのです。
ですので、新しい板におろすときとワックスを全部落としたあとは、必ずベースコートから始めてください。毎回のセッション前はトップコートだけで構いません。
道具は何が要るか
塗るだけなら、必要なものは多くありません。ベースコートを1個、使う季節の水温帯のトップコートを1個、そして板を拭くタオル。これだけです。
あるとよいのがワックスケースです。ワックスをむき出しでバッグに入れると砂が付きますし、夏は溶けて中で広がってしまいますので、100円台のプラスチック容器でも入れておいたほうが結果的に楽になります。
スクレーパー(剥がす道具)は、塗るだけなら不要です。ダマができたときと季節の切り替えで落とすときにだけ使いますので、剥がす側の道具についてはワックスの落とし方をご覧ください。
塗り方の手順
板が乾いていて汚れていない状態から始めます。濡れた板や砂の付いた板に塗ると、ワックスの中に砂を巻き込んでしまうからです。
1. ベースコートを、縦か横に一方向で塗る
ノーズからテールに向かって、あるいはレールからレールへ、まっすぐ線を引くように塗ります。強く押しつけず、角を使って軽く動かしてください。

2. 逆方向にもう一度塗る
最初と交差する向きです。縦に引いたなら横、横に引いたなら縦。これで格子ができます。

3. 斜めに塗る
さらに45度ずらして、もう一度重ねます。この重ね方をクロスパターンと呼び、線が交差するところに小さな粒が立ってきます。
4. 粒が立ったのを確認する
手のひらで撫でて、ざらつきが均一に出ていればベースは完成です。つるつるした場所が残っていればそこにもう少し足してください。

5. トップコートを、円を描くように乗せる
ベースができていれば、上から軽く円を描くだけで乗りますので、力は要りません。
いちばんのコツは力を入れないことです。強く押しつけると粒が立たずに平らに潰れてしまいますから、軽く何度も重ねるほうが結果的に早く仕上がります。
一部が厚く固まってダマになったときは、無理に伸ばそうとせず、スクレーパーの角で削ってから塗り直したほうが早いです。
どこまで塗るか — 塗る範囲
全面に塗る必要はありません。対象は足が乗る範囲と、パドリング中に胸や手が触れる範囲です。具体的にはテールからボードの中央あたりまでと、テイクオフのときに手をつくレール寄りの部分になります。
ノーズ側については乗る板によります。ショートボードならノーズの先端まで塗る必要はほとんどありませんが、ロングボードでノーズライディングをするなら当然そこまで要ります。自分がどこに立ってどこに手をつくかで決めてください。
デッキパッド(テールパッド)を貼っている場合、その部分は不要です。パッドの縁にワックスが乗ると砂がたまりやすくなりますので、境目は避けて塗ります。なお、ボトム面には塗りません。
新しい板をおろすときは、少し丁寧にやる
新品の板は表面に何も乗っていませんから、ここで作ったベースがそのシーズンの土台になります。急がずにやってください。
まず、乾いた布で表面の汚れを落とします。新品でも製造や輸送のときの油分が残っていることがありますので、この一手間で乗りが変わります。
ベースコートは、いつもより時間をかけて作ります。クロスパターンを縦・横・斜めの3方向で、それぞれ2回ずつくらい重ねて、粒が均一に立つまで続けてください。ここで手を抜くと、シーズンを通してトップコートが乗りにくくなってしまいます。
塗る範囲は最初に決めておきます。あとから広げるのは簡単ですが狭めるには落とす作業が要りますので、最初は自分が確実に足を置く範囲だけにして、乗ってみて足りなければ足すという順番のほうが無駄になりません。
そして1回目のセッションのあとに、足りない場所が分かります。足が滑った場所と手が滑った場所を覚えておいて、次に塗るときにそこを足してください。板ごとに、自分の立ち位置は少しずつ違うものです。
塗り替えのタイミングを、何で判断するか
「何ヶ月ごと」という決まりはありません。乗る頻度と季節で変わりますので、次の4つで判断してください。
1. 触ってざらつきが無いとき
手のひらで撫でてつるつるしていたら、グリップは失われています。これがいちばん分かりやすい合図です。
2. 黒ずんできたとき
砂と汚れを巻き込むとワックスは黒くなります。見た目の問題だけでなく、巻き込んだ砂が板を削ることもありますので、黒くなったら落として塗り直してください。
3. 足が滑ったとき
セッション中に足の位置がずれるようになったら、上がったときに足してください。滑る状態のまま続けても、うまく乗れません。
4. 水温が変わったとき
これが季節の切り替えです。次の項で書きます。
なお、トップコートを足すのと全部落として塗り直すのは別の作業です。毎回のセッション前にやるのは前者ですし、落として作り直すのは黒ずんだときと季節が変わったときだけで足ります。
落として塗り直すときは、板を見る機会でもある
季節の変わり目にワックスを全部落とすと、板の素の表面が出てきます。年に何度もない、デッキ面をまっすぐ見られる機会ですので、塗り直す前に次の3つを見ておいてください。
細かいひび割れ
足を置く位置の周りに、髪の毛ほどの線が入っていることがあります。ワックスが乗っているあいだは見えません。
へこみ
立つ位置に浅い凹みができていないかを見ます。ワックス越しでは分かりにくい変化です。
リーシュカップとフィンボックスの周り
縁が欠けていないか、隙間が広がっていないか。ここから水が入りますので、いちばん気にしたい箇所です。
見つかった傷を直すべきかどうかの判断は、サーフボードの傷はどの程度でリペアすべきかにまとめました。塗ったあとに気づくとその部分をまた落とすことになりますので、ワックスを塗り直す前に直しておくと二度手間になりません。
季節が変わるとき、どうするか
ここでよく迷うと思います。前のシーズンのワックスの上に、違う硬さのものを重ねていいのかという問題です。
水温が上がっていく時期(春から夏)は、落としてから塗り直す
下に柔らかいワックスが残っている状態で硬いものを重ねると、下の層が水温で溶けて上ごと崩れてしまいます。
水温が下がっていく時期(秋から冬)は、そのまま重ねてもよい
下が硬く上が柔らかい構造になりますので、ベースコートと同じ関係が成り立ち、下地として機能してくれます。
つまり手間がかかるのは春です。冬のあいだの柔らかいワックスを全部落として、夏用に作り直す作業が要ります。逆に秋は上から足していくだけで乗り切れることが多いです。迷ったら落としてください。落として作り直すほうが、確実に失敗しません。
夏、ワックスが溶けてしまうとき
夏にいちばん多いトラブルがこれです。板の上でワックスが溶けて流れ、ざらつきが無くなってしまう。
原因は水温ではなく、海に入る前の時間にあることがほとんどです。車に積んだまま駐車場に置いている時間、あるいは海に着いてから入るまで砂浜に置いている時間。ここで板の表面温度が上がります。
当社が2026年8月に測ったところ、日除けをした車内に寝かせた板の表面は最高52.2℃まで上がり、40℃以上だった時間は9.2時間に達しました。直射日光に晒したわけではなく、日陰に停めた状態での数字です。詳しくはサーフボードを車に積みっぱなしにするとどうなるかにまとめています。
ワックスが何度で溶けるかは当社では測っていませんので、そこは断定しません。ただ、そういう温度になる環境が夏の駐車場には普通にあるということです。
対策は3つあります。
1. 車から降ろす
海に着いたら板を日陰に移します。これがいちばん効きます。
2. 板を裏返して置く
砂浜に置くときにデッキ面を下に向ければ、ワックスの面に直射が当たらなくなります。
3. 水温に合った硬さを使う
夏に柔らかいワックスを使っているとそれだけ溶けやすくなりますので、パッケージの水温帯を確認してください。
なお、溶けたワックスがケースの内側に移ると、そこで砂を噛んで固まってしまいます。ケースに入れて運ぶなら、なおさら降ろすタイミングを早めてください。
ワックスそのものの保管
意外と見落とされるのが、ワックス自体の置き場所です。
夏の車に置きっぱなしにしないでください。板と同じで車内のワックスも溶けますし、溶けて固まったワックスは粒が立ちにくくなります。バッグごと家に持って帰るのがいちばん確実です。
砂浜に置くときも、バッグの中か日陰に置いてください。直射日光に当て続けると、それだけで柔らかくなってしまいます。
ケースに入れておくのは、砂対策でもあります。むき出しだと砂が付きますし、砂の付いたワックスを塗ると、その砂ごと板に塗り込むことになるからです。
長く置いたワックスは硬くなることがありますので、去年の残りを使うときは手で押してみて、いつもの感触かを確かめてください。硬くなっていたら、ベースコートとして使ってしまうのがひとつの手です。
やってしまいがちなこと
- 濡れた板に塗る — 水気があるとワックスが乗りませんので、拭いてから塗ってください
- 強く押しつけて塗る — 粒が立たず平らな膜になりますから、軽く何度もが正解です
- ベースを作らずにトップだけ塗る — すぐ剥がれます。新品と落としたあとは必ずベースから
- 気温で選ぶ — 判断するのは水温です
- 黒くなったまま使い続ける — 巻き込んだ砂が板を削ってしまいます
- 全面に厚く塗る — 必要のない範囲まで塗ると、落とすときの手間が増えるだけです
よく聞かれること
Q. 毎回塗らないといけませんか。
A. ベースができていれば、毎回はトップコートを軽く足すだけで済みます。ざらつきが残っているなら、その日は何もしなくても構いません。
Q. ワックスは何個持っておけばいいですか。
A. 使っている季節のトップコートとベースコートの2つがあれば足ります。季節の変わり目には、次の季節のぶんが1つ増えることになります。
Q. ワックスの代わりになるものはありますか。
A. デッキパッドを全面に貼るという方法はありますが、板の性格が変わりますし費用もかかりますので、一般的にはワックスを塗ります。
Q. ワックスは古くなりますか。
A. 保管しているうちに硬くなることがあります。何年も前のものが出てきたら、塗る前に一度手で触っていつもの硬さかを確かめてください。
Q. レンタルボードや借りた板はどうすればいいですか。
A. すでにワックスが乗っていることがほとんどです。ざらつきが残っているならそのまま乗れますし、つるつるしていれば上からトップコートを足してください。人の板を勝手に全部落とすのは避けます。
Q. 塗ったあと、すぐ海に入っていいですか。
A. 構いません。乾かす時間は要りませんが、塗った直後は粒が立っているぶん、ウェットスーツの生地が引っかかることがあります。
まとめ
塗る場面は4つです。新しい板、落としたあと、季節の変わり目、そして毎回のセッション前。前の2つは下地から作り、季節の変わり目は切り替え、毎回は足すだけで済みます。
選ぶ基準は水温ひとつですから、気温では決めません。水温が高いほど硬いワックスを選びますが、具体的な数字はブランドで違いますのでパッケージの表記に従ってください。
塗り方はベースコートとトップコートの2層です。ベースをクロスパターンで作り、粒が立ってからトップを乗せます。力は入れません。
塗り替えは期間ではなく手触りで決めます。触ってざらつきが無ければ、その日が塗り替えの日です。
Shignの場合
Shign の Journey Light は、ショートボード用のボードケース(ソフトカバー)です。
Journey Light(Hemp Indigo / Premium Black)。生地は一枚の中で柄が移り変わるように織られているため、同じカラー・同じサイズでも一点ごとに柄の出方が違います。
ワックスを塗った板をそのまま夏の車に積むと、溶けたワックスが内側に移り、車内やほかの荷物を汚すことがあります。掛けておけばそれを受け止められますので、運ぶあいだの一枚として使ってください。
生地は70Dリップストップ・ポリエステル100%で丈夫です。リップストップ織りが引き裂きの広がりを抑え、裏面のアクリル樹脂加工によってワックスが染み込みにくい処理を施しています(ワックスの染み込みを完全に防ぐものではありません)。撥水と紫外線の劣化防止は後加工ではなく生地レベルで備わっていますので、板を日焼けから守る役割もあります。ファスナーのないスリップオン式で、重量は約450g。海から戻ってさっと掛ける動作に無理がありません。
何よりもユニークなデザインが特徴です。和柄の麻をモチーフにした生地は、シンメトリーからアシンメトリーへ移り変わる大きな一枚として織られていて、そこから切り出すため一点ごとに柄の出方が違います。人と同じものは選びたくない、という方にぴったりのサーフボードカバーです。
対応サイズはShort(〜6'4"/193cm)で、Mid・Longは計画中です。
熱については防げません。当社の実測でも、ケースを掛けた板の到達温度は下がりませんでした。長く積むなら、ワックスを落としてから入れたほうがあとが楽になります。
ワックスを落とす手順は サーフボードのワックスの落とし方 に、保管全体の考え方は サーフボードの保管方法 にまとめています。




